はじめに
『ザ・ビジョン/ケン・ブランチャード(著)』は、人生のビジョンの作り方を紹介する一冊であり、
ビジョンとは「自分は何者で、何をめざし、何を基準にして進んでいくのかを表すもの」であるとされています。
この人生のビジョンを定めることで、全力でそのビジョンの実現に取り組むことができるようになります。
物語の中では、保険会社の経営者ジムが、経理の仕事をするエリーと協力して、
会社のビジョンを創り上げていく様子がストーリー仕立てで書かれています。
著者のケン・ブランチャードは、コーネル大学で博士号を取得し、現在も同大学の講師、名誉理事を務めています。
また、大ベストセラーとなった「1分間マネジャー」(スペンサー・ジョンソンとの共著)の著者としても世界的に知られる存在です。
ちなみに、元サッカー日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史氏も本書を通して大きな感銘を受けたそうです。
『組織を動かすのは「自分は何者で、何を目指して、何を基準に進むか」
つまりビジョンだということを改めて認識させられた』
――元サッカー日本代表監督・FC今治オーナー 岡田武史
本記事では、本書から学ぶことができる起業家の成功を決定づける大切な考え方を紹介します。
「ザ・ビジョン」から学ぶ起業家に必要な考え方
起業家に必要なビジョンとは
起業をするにあたり、ビジョンという概念は非常に重要です。ビジョンとは、将来を見据えた長期的な目標や理想を持つことです。
起業家が持つビジョンは、事業を展開する上での方向性を示し、全社員が共有することで、一丸となって取り組むことができます。
例えば、製薬会社メルクのミッション・ステートメントは、
「生活の質を維持・向上させるような、優れた製品・サービスを社会に提供する」ことだと言われています。
これは、メルクが持つビジョンを示しています。
そして、そのビジョンを共有することで、メルクは高品質な医薬品を開発し続け、患者さんに貢献することができています。
ここからわかることは、起業家自身も、自分自身の人生におけるビジョンを持つことが重要だということです。
「何をしたいか」「何になりたいか」を明確にすることで、自分自身が望む方向に向かって取り組むことができます。
これにより、起業に対するやる気やモチベーションを保ち、成功へと近づけることができます。
ビジョンを持たない起業家は失敗する
ビジョンを持たない起業家は、目的も明確でなく、行動も曖昧になり、最終的には失敗する可能性が高いです。
具体的な例を挙げると、市場のニーズに対応しながら商品の開発や販売をすることができないため、競合他社に差をつけられなくなります。
例えば、ある起業家は
「自分のブランドの食品を全国のスーパーマーケットで販売し、売上を10億円にする」というビジョンを持っていた場合、
それに向けての戦略を立て、目標達成に向けた具体的な行動を起こすことができます。
一方で、ビジョンを持っていない起業家は、目的も明確でなく、行動も曖昧になり、最終的には失敗する可能性が高いです。
例えば、ある起業家は単に「商売をする」というだけの目的を持っていた場合、
市場のニーズに対して適切な対応をすることができず、競合他社に差をつけることができないでしょう。
また、従業員や関係者に対しても明確な方向性を持たせることができず、チームワークも悪化します。
ビジョンを持つことで、起業家は目標を明確にすることができ、
それに向けた行動を起こすことができるため、成功する可能性が高くなります。
「ザ・ビジョン」から学ぶビジョンの要素
有意義な目的をもつこと
ビジョンを作成する上で最も重要な要素の一つが、有意義な目的です。
有意義な目的とは、自らが目指すことが本当に重要であると感じ、
かつ、それが社会に貢献することができるものであることを指します。
例えば、「環境に優しい農法を推進し、健康な食品を提供する」といった目的は、
自らが目指すことが本当に重要であると感じ、かつ、社会に貢献することができるため、有意義な目的と言えます。
ほかにも、「世界中の貧困層に教育機会を提供する」というビジョンを持つNPO団体は、
それに向けて教育プログラムの開発や資金調達活動を行い、目標を達成します。
また、「環境に優しい輸送手段を普及させる」というビジョンを持つ企業は、それに向けた研究開発や販売活動を行って、
環境に配慮した交通手段の普及に貢献します。有意義な目的を持つことで、
社会貢献や環境保護などの意義を持った事業を展開することができます。
一方で、「裕福な生活を送る」「儲けを増やす」といった目的は、個人的な願望であり、
社会に貢献することができないため、有意義な目的とは言えません。
有意義な目的を持つことで、ビジョンを達成するために必要なエネルギーを発揮することができ、より具体的なアクションが取れるようになります。
明確な価値観をもつこと
ビジョンを持つ上で重要な要素の一つが、明確な価値観です。
価値観とは、自らの行動基準やガイドラインを示し、「いかに」「どのように」を説明するものです。
例えば、「環境に配慮した製品を提供する」といったビジョンを持つ企業は、それに向けて環境に配慮した製造方法や材料の選定、
リサイクルなどの施策を取り入れることで、明確な価値観を具体的に実践します。
具体的な事例としては、「環境に配慮した製品の開発」や「社会的責任を果たす」といった明確な価値観を持つ企業があります。
例えば、TOMSという靴のブランドは、一足買ったら一足を寄付するとい「一足・一足」のビジョンを持ち、社会貢献に取り組んでいます。
また、パナソニックは「環境に配慮した製品の開発」を価値観とし、省エネや再生可能エネルギーなどの環境に優しい製品の開発に力を入れています。
また、明確な価値観を共有し、従業員や関係者にも伝えることで、組織全体での行動方針が統一され、より大きな目標を達成することができます。
それに対して、明確な価値観を持たない起業家は、行動指針が曖昧であり、市場ニーズに対しても適切な対応ができない可能性が高いです。
未来のイメージをもつこと
ビジョンを持つ上で重要な要素の1つが「未来のイメージ」です。未来のイメージとは、将来に到達したい姿を具体的にイメージし、それを目指して行動することを指します。
例えば、「世界最大のテクノロジー企業になる」といったビジョンを持つ企業は、それに向けて最新技術の開発や投資を行い、未来のイメージを実現するための具体的な計画を立てます。
具体的な企業の例として、Teslaは「電気自動車の普及を通じて環境保護に貢献する」という未来のイメージを持っており、
それに向けての戦略を立て、高性能な電気自動車の開発や充電インフラの整備などを行っています。
また、インターネット技術を活用して、世界中の人々が情報を共有できる環境を構築することを目指すGoogleも未来のイメージを持っている企業の一つです。
未来のイメージを持つことで、目標に向かって一貫した行動を起こすことができ、目標達成に近づくことができます。
また、未来のイメージを共有し、従業員や関係者とともに取り組むことで、より大きな目標を達成することができます。
「ザ・ビジョン」から学ぶビジョンを達成するための戦略
明確な目標設定を行う
明確な目標設定を行うことは、ビジネスにおいて非常に重要です。
目標設定をすることで、企業は何を達成したいのか、どのように達成するのか、どのような期限で達成するのかを明確にすることができます。
それによって、従業員も目標に向けた取り組みをすることができるようになり、組織全体の方向性が明確になります。
例えば、「健康的な食品を提供し、健康な社会を目指す」といったビジョンを持つ起業家は、それに向けて、
1年後にはX%の人が健康的な食品を消費するようにする、3年後には新しい健康食品の開発を行う、
5年後には海外にも展開するといった目標を設定することができます。
ほかの例としては、ある企業が「来年までに売上を20%増加させる」という明確な目標を設定し、
それに向けての戦略を立てることで、目標達成に向けた具体的な行動を起こすことができます。
また、目標達成のためのKPI(Key Performance Indicator)(※)を設定し、達成度を確認しながら、
調整を繰り返すことで、より効率的な戦略を立てることができます。
※KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、「主要なパフォーマンス指標」を意味します。
それは、企業や組織の戦略や目標の達成度を測るために使用される指標で、
販売、利益、客単価などの財務指標や、カスタマーサティスファクション、品質などのオペレーション指標などがあります。
KPIは、組織のパフォーマンスを測定し、改善するために重要な役割を果たします。
明確な目標設定をすることで、ビジョンの達成に向けた具体的なアクションプランを立案するとともに、
組織や個人が望む成果に向けた努力を集中させることができ、モチベーションを高めることができます。
その結果、組織や個人が達成した目標を評価し、改善することができるようになります。
タイムフレームの設定を行う
ビジョンを達成するためには、明確な目標を設定するとともに、タイムフレームいわゆる期限を明確に設定することが重要です。
タイムフレームを設定することで、目標達成までの時間を見積もり、スケジュールを立てることができます。
具体的には、「1年後にはXを達成する」「3年後にはYを達成する」などのように目標達成の期限を設定することで、
目標を達成するためのスケジュールを立てることができます。
例えば、「5年後には自分のブランドの食品を全国のスーパーマーケットで販売し、売上を10億円にする」というように期限を設定し、
それに向けての戦略を立てることで、目標達成に向けた具体的な行動を起こすことができるでしょう。
また、タイムフレームを設定することで、達成期限を意識し、スケジュールを調整し、効率的に目標に向かって取り組むことができます。
これにより、ビジョンの達成に向けて、確実なステップを踏むことができ、失敗を最小限に抑えることができます。
行動計画の作成を行う
ビジョンを達成するためには、目標設定やタイムフレームの設定も重要ですが、それだけでは不十分です。
実際に目標を達成するためには、明確な行動計画を作成することが重要です。
具体的には、目標の達成に必要なリソースの確保やタイムマネジメントなどの基本的な戦略から、
ターゲット顧客の選定や商品・サービスの開発、マーケティング戦略などの専門的な戦略を立案すること。
さらに、目標達成のために必要な資金や人材、設備などのリソースを調達し、それらを使って効率的に行動を起こすこと。
また、市場の変化や競合状況に対応するためにも、常にフレキシブルに対応することが求められます。
例えば、「健康的な食品を提供する」というビジョンを持った起業家は、
それに向けての行動計画を作成することで、目標達成に向けた具体的な行動を起こすことができます。
そして、その行動計画としては、1か月に1回の開発会議を開き、新しい食品の開発を進めること、
3か月に1回の調査を行い市場のニーズを把握すること、6か月に1回の新製品発表会を開くことなどが挙げられます。
これらの行動計画を積極的に実行することで、ビジョンを達成するための戦略を立てることができます。
また、ある企業が「1年後には新規顧客を1000人獲得する」という目標を設定した場合、それに向けての行動計画として、
月ごとに顧客獲得のターゲットを設定し、広告宣伝やセールス活動を行うこと、新規顧客獲得に特化したプロモーションを行うこと、
顧客ニーズに合わせたサービスの提供を行うことなどが考えられます。
また、定期的にターゲットの達成状況を評価し、必要に応じて行動計画を調整することで、目標達成に向けた具体的な行動を起こすことができます。
まとめ
本記事では、ケン・ブランチャード著「ザ・ビジョン」から学ぶ起業家に必要なビジョンについて、
有意義な目的、明確な価値観、未来のイメージ、目標設定、タイムフレームの設定、行動計画の作成などの要素について説明しました。
「ザ・ビジョン」を読むことで、あなたの人生や事業において重要なことであるビジョンを持つことの重要性を理解することができ、
それを達成するためにはどのような戦略を立てるべきか、具体的な例を通じて学ぶことができるでしょう。
ちなみに本書のなかでは、主人公のエリーが学校のPTAの会合において「学校のあり方」について校長先生と議論し、
ビジョンに基づいた目的と価値観による意見によって、参加者全員を魅了する様子も描かれています。
こうしたことからこの考え方は職場や仕事関連だけでなく、学校や家庭の問題にも有効であるといえます。
本書を読み終えると、あなた自身のビジョンを明確にすることができ、
それを達成するために必要なステップを踏むことができるはずです。
ぜひ本書を通じて、あなたの人生や事業をより成功に導くためのヒントを見つけてください。